児童相談所と子どもの虐待を考える

特別区議会議員講演会にて「子どもの虐待防止と児童相談所の設置」をテーマに、明星大学の川松 亮先生の講演を受けてきました。なぜ今「児童相談所」について、私たち議員や行政職員が日々学んでいるか、は以下によります。

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★2016年、児童福祉法の改正
第12条 都道府県は児童相談所を設置しなくてはならない

第59条の4 大都市等の特例
政令指定都市等(特別区を含む児童相談所設置市も同様)に適用

この法改正により、特別区にも設置できるようになり、
特別区の自治権拡大の流れを受け、東京都からの「移管」について検討が始まった

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具体的に検討が進んでいるのは、荒川区、江戸川区、世田谷区というお話でした。

■児童相談所が区に移管されることへの期待としては
「地域の子育て」としての視点
「地域に密着」した支援等のサービスにつなぎやすくなる
「虐待予防」の取り組みとの連動
などが挙げられる。

■一方で大きな課題は「人材不足」(ここでも!涙)
相談所職員は法定職種に「児童福祉司」「児童心理司」、医師及び保健師、弁護士がある。またその他に警察官や教員なども専門性のあるチームの一員として配置されている所もある。
※ちなみに、東京都は「教員」の配置ゼロ。

「児童福祉司」「児童心理司」はスーパーバイザーを含む構成とされており、この取得には、それぞれ経験が5年以上、10年以上とされている。
しかし、一方で全国の職員をみると、両者のおよそ半数が3年未満の経験者で占められている。スーパーバイザーを増やすにも、まだまだ時間がかかることが、これだけでもわかります。

■週刊東洋経済(2019年9月21日号)でも、独自調査として、そのブラックな職場環境が伝えられています。
急増している虐待対応件数に増員が追いつかず、米国では1人の福祉司で20名程が平均であるが日本は41件とその倍以上である。
※講演会では東京都は1人で100件を超えて担当しているとの説明もあった

児童や保護者と会うためには、夕方以降の勤務となることが多く、また通告から48時間以内に子どもの安全確認が必要となることから、夜間や土日を問わず対応が必要となることもある。こうした業務内容から「三六協定」を結ばなくてもよいとされており、時間外労働が月に90時間を超えたり、有給休暇ゼロとなったりしているところもある。
東京都の時間外労働は最大で月に66.7時間、1人あたり担当64件とされている

<中央区を考える>by 高橋まきこ

子ども家庭支援センターとの関係
現在、中央区では勝どきに「子ども家庭支援センター」があり、区内全域を支援対象としています。これを残そうというのが世田谷区、一体化しようとしているのが荒川区、江戸川区の動きであるそうです。各地へのアクセスとなると、区内の中心部である必要がありそうだと思う一方、やはり土地面積の問題もあり、難しいと感じます。
相談所と一体となって「相談しにくくなる」のだけは、避けたいと強く思い、引き続き中央区スタイルを探ります。

■今からでも必要なこと
地域にある様々な支援の輪をつないでおくことが、移管に関わらず「親子が安心して過ごす」ためには必要なのだと思っています。今も課題である「教育と保育の連携」「地域とのつながり」などは、一歩ずつでも改善していかないと、更に難しくなると感じます。民間との協働を促進しながら、それらの改善をより早めていかないと、いざという時に機能しないし、虐待予防には程遠い環境であると言わざるを得ません。これまで訴えてきた、待機児童や一時預かり保育の問題をはじめ、常態化してしまっている課題への取組みも、急がないとならないと、強く思っています。

引き続き、これらの情報や声が集まる機会について、ご紹介いただけましたら幸いです。お待ちしています!

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